2025年09月のご挨拶

「レヌカー再起の旅・第一回を無事施行しました。「夜はナイトサファリを楽しみ アトラスオオカブトを観て 翌朝はフンコロガシを探して ハイキングするカオヤイ国立公園の旅」です。 嬉しい気持ちで一杯です。施行前は 不安もありました。 この足で 全行程を歩きとおせるだろうか? ぬかるみで よろけないかな? 息は続くだろうか?

レヌカーの再起第一歩を見守ろうと 8月23日(土)12時半 アソーク交差点近くに集合くださった精鋭6名のお客さまを「レヌカーの旅」の伝統にしたがい 申込順に記しまと、 市村潤也さま 吉本昭雄さま 佐野弘和さまと二人のお坊ちゃま そして 中村理浩さまです。

旅は まず「レヌカーの話」で始まりました。
「なぜ カオヤイへ行ってカブトムシを観るか?」は 人類学と博物学、西欧列強の植民地統治と経営、新奇な天然資源の利用と経済利益」に続くのですが、ヴァンに乗る30分前までトンカツを揚げていたので、学問の系譜はどこかへ吹っ飛んでしまい 重要人物の名が出てきません。

「1498年にインドに到着したのは 誰だっけ?」 ぐっと詰まってしまったレヌカーに、「ヴァスコ・ダ・ガマ」とささやいたのは 市村氏。この旅に一番に申し込まれた故に私の隣の座席にお座りになっていました。「そう そのヴァスコ・ダ・ガマが・・・」と言葉を継ぎながら、「この方は頼りになる」と感謝したレヌカーでした。市村氏は少年のころ 御父上の転勤でメキシコに在住中、南米大陸を旅してまわられました。 南米は知らないが 世界を知りたい、旅したい志向の私には嬉しいお仲間発見です。
外地勤務になったのだから、日本で観れないものは観ておこう。「知的貪欲さを発揮して」と言えばよかったかもしれません。バンコクからランシット経由33号線に入るまでの車内の会話で参加者皆様の「知的貪欲さ」を知って、勇気百倍!旅をやる気が満ちてきました。

カオヤイ国立公園プラチンブリ―口到着は 16時過ぎ。今回は象に阻まれることなく タナラット・ゾーンの宿舎に到着。夕食はビーフ・カレーとトンカツ、山盛りのレタスと数種のドレッシング マカロニ・サラダのハムは車に積んだはずの包みが見つからず いれずじまいでした。

「象が出たぞ!」の報せで 夕食前にレーンジャーのブンジン君がお客様をお連れして 象ウォッチング。早く帰ってきてくれたのは 良かった。雨が降り出したのです。雨を観ながら夕食。 お子様用のカレーも中辛の大人用も気に入っていただいて まずは満腹。
デザートのパイナプルとスイカの残りで 甲虫トラップをつくり 白布と照明をつけて ナイトサファリに出発しました。

この夜は新月の闇夜。ナイトサファリには絶好です。暗闇に光る眼に導かれて 草原をサーチライトで照らすと・・・・あれは ジャコウネコ! 横に流れる派手な縞模様が 尻尾まで続いている。 その向こうを走るのはハクビシン。 ヤマアラシがとげとげの針毛を四方八方に張って 歩いていく。 夫婦で行動するのが 多いのに 今夜はなぜか単独行。 若狐たちの単独行もちらほら見える。ブンジン君は 狐は雨が降ると蛙を食べに出だすというが 本当かしら? 犬と狐、タヌキは性癖が似ていると言われる。 我が家には タイの山犬系の犬が3匹残っているが 蛙は食べない。我が家の庭では ガマガエルもキヤットもごまんといて 雨が降れば大合唱。 この狐たちは誰かが連れてきて 放したのが増えつつあると もっぱらの噂だが どこの狐が蛙を食べるのか?

角の生えた大鹿たちの群れが 草を食んでいる。 胸から血を流しているのは若い雌鹿たちで、 雄を呼んでいるのだと ブンジン君が説明します。この冷たい雨の中をねぇ。 山上は23度を切る涼しさでした。

「象だ! 象だ!」 と、ブンジン君が又わめくが 崖の上に立っている2匹の象は下の道路からは 幾ら背伸びしても 大きなお尻しか見えません。
「象はやっぱり あの長い鼻が見えなきゃなぁ」と思ったことでした。



宿舎に戻ると ヴェランダのトラップに直行。 いました! いました! まずは アトラスの雄 ばんざーい、雌も・・・・・彼女が来たから雄君も誘われたんでしょうね。 まるっきり 違う雰囲気で きちんと座っているのはクワガタ雄君。例年は うす茶色のツヤクワガタだけれど 今年は 黒っぽいクワガタ。
子供たちも、大人も、 ミロもバナナケーキにも眼もくれず 甲虫たちに興奮状態です。この機会に 私はトンカツとカレーで夕食。 そうこうするうちに佐野お父さんとお子さん二人はリタイヤー。お茶を飲みながら 大人たちの四方山話だべり会が始まりました。
圧巻は吉本様のオオカブト雌雄まぐわいの実況中継です。私は趣味がそっちのほうにはないので 遠目で観ただけですが 吉本様の実況は かのオリンピック中継「前畑 がんばれ!」をしのぐ迫力でした。思い直すと本邦初の記録かもしれず ご本人の許可を得て ここに掲載させていただきます。



くわがたの写真ものせます。例年は 薄茶色のツヤクワガタが出てくるのですが 今年はトラップにかかったのは シバツヤクワガタの雄が一匹でした。



24日(日) この日の朝は 6時から朝食の支度。女性レーンジャーのクヮーンの到着は その前からでした。クヮーンは1979年頃 カオヤイを歩き始めた私に最初についた道案内です。其のころの彼女はまだ痩せていて よく笑う若い女性でした。以来40年以上のつきあいです。 その間には 夫の転勤に従った私のスリランカ駐在トルコ駐在 骨折2回 何回かの手術と入院がありました。クヮーンも病気したり 怪我したりしましたが、 いつもカオヤイに来た時には 彼女に助けてもらいました。 クヮーンとは 鹿の意味です。鹿の目は聡明そうですが 優しくはありません。でも人間のクヮーンの眼は優しく 彼女に会うと心が休まります。彼女の官舎はプラチンブリー側でなく ラムタコーン川辺のコーラート県近いのですが 朝暗い内から山道を迎えに走った運転手ブンクヮーンもクヮーンの価値を知る人です。

朝食のメインは 昨晩のカレーの残りにトンカツ。「一晩置いたカレーは美味しい」という昔の人の言葉を信じてのメニューです。トンカッも昨晩の残りですが これにも「美味しいトンカツは一晩おいても美味しい」という 信仰があります。 肉はスクムヴィット・ソイ31のヴィラ本店で トンカツ用に吟味して。

1センチ程度の薄さに切ってもらったものを 叩いてもらった特制品です。お客様6人??に30枚作って 私が自分で揚げました。それが ちょうど半分ほど残っていたので 安心でした。ソースはブルドックの中濃ソースです。これは父亡き後 私たち家族を面倒みてくれた伯父秋山真一の好みです。耳鼻科の医者でした。

佐野さまご一家には 特注のスクランブル・エッグをつくりました。薄く焼いたトーストの上に バターを溶かしたフライパンにとき卵2個と牛乳を掻き混ぜ 載せただけのものですが 佐野家のレシピ―は その上に水玉模様にかけたトマトケチャップとお見受けしました。お父さんのお皿も お二人のお坊ちゃんのお皿も同じです。私は ベーコン味のスクランブルエッグも好きです。それなら (形のある)卵料理はお嫌いな中村さまも召し上がってくださるでしょうか?

 食後の果物はスイカでした。今度の旅では 果物類は バンコクで買っていったのですが 適度に熟していて正解でした。

8時15分には タナラットゾーンを出て ハイキングコースのあるコーラート県側に移動。国道3077号線からカオヤイの稜線に出て 三叉路を左折して 国道2090号線に出ました。昨晩のナイトサファリで通った尾根道です。2車線道路は亀甲形で 当然のことながら 降った雨水は両脇に流れ 排水されます。

道路の発達していなかったタイ国土に高級道路を紹介したのは 後の軍事援助につなげたのは米国です。道のは米国でしたが 路の両側にひろがる草原帯の出現は米軍のためのレーダー建設とその保護のためにカオヤイ地域一帯が国立公園として囲いこまれる以前からです。
この国有林の尾根地帯に侵入した農民たちは村をつくり 長年の間 焼き畑農業を営んだのです。彼らが立ち退かされ 焼き畑農業がなくなっても 森はもとには戻らないのです。

国道が2本も敷設され その分 自然は失われたのに カオヤイ国立公園が世界遺産と指定された陰には こうした自然と人間と社会の営みの歴史によせる土地の人々の思いがあります。

本日のハイキングコースはルート3。その入口は 国道2090号線の33キロ地点です。タイと米国の友情道路(後の国道2号線)のパークチョン分岐点から1キロ毎に設置された里程標の33番目の標識地点です。



道路脇を少し登り ルート3入口の看板前に立つと もうそこは天然林の中。ホワホワホワ・ホワ・・と甲高い鳴き声は手長猿。彼らのテリトリーを主張する警戒の声です。昨夜の雨で濡れた落ち葉のけものみちを歩きます。落花を追って 上をみあげると 太い幹の上に広がる梢(カノピー)。 白肌の寄成樹がからまり 大樹を覆う光景もみられます。 さらに進むと 梢近くまで伸びた寄生樹が一回り巻いて 大樹をしめつけている光景が見られました。

「絞め殺しの木です」 すかさず ブンジン君が説明します。 フタバガキは硬木ですが 寄生樹は溶樹と呼ばれるガジュマル類で 寄生する大木にべったりくっついて その木を乗っ取ります。 大樹の根本にも 板根の発達した溶樹のもとにも 虫や小動物が棲みつき 植物が寄生したり 自生したりしています。私たちは ヤマアラシの針毛、 ランブータンに似た赤い実もひろいました。 鹿が食べるというシーシアットの実は噛んでみると 酸っぱく 爽やかな味でした。

森林の掃除役あり君たちは 長い行列をつくって 自分たちの巣に餌を運んでいきます。ダンゴムシにも会いました。 この森には クラティンと呼ばれる野牛が棲んでいます。その牛たちの糞場では 糞虫を探しました。小さな 小さな虫を掌に載せて 指で頭をそっとなで ・・・・ 角を探します。角があったら 雄 なかったら雌です。 子供たちも 大人もフンコロガシ探しには すぐ慣れました。 セミが地面から 土堀しながら出てきます. 長い土筒の先が開いていませんから まだ 出てきていないのです。サソリの穴も 数か所みつけました。

ここらで 佐野ジュニアたちの活躍を記しましょう。

ご長男が7歳のジラパット君 ご次男が3歳のチャノン君。 御二人とも タイの自然に溶け込んで 自由自在。怖がりもせず いやがりもせず 大樹の間をポンポンと飛びながら 走っていく姿は 驚きでした。 ブンジンより先に走るチャノン君に注意します。「ガイドさんより 先に歩いたら いけませんよ。蛇が出るかもしれませんからね」 でも 蛇など  怖くないみたいです。 でも ヒルはいたるところにいますからね。 素晴らしいのは おしゃべりもしないで ただ歩き 森を観ることを楽しんでいるご様子でした。

ルート3は ホーンビルや手長猿などの梢(カノピー)に棲む鳥や動物を観ることができるコースですが この日もチャンスは2回訪れました。でも カオヤイのこのコースでのウォッチングは ケーンクラチャン国立公園とかオーストラリアのブルーマウンテン公園のように 高い稜線から見下ろし 一人が見れれば 後の5人も同様に見れるのとは違います。ここでは 大樹の間の細い道を梢を見上げながら 歩き 観察するのです。 一人が鳴き声を聞き 身構える内に飛び立つ羽音が聞こえ ざわざわとすると もう ホーンビルは彼方の大樹の梢めがけて飛んでいくところです。 手長猿の場合は 飛ばずに 跳ぶので それに木の葉がゆれるとか ご登場前に少し前ぶれがあるので 大勢が一度に観られるチャンスもあります。
お坊ちゃんたちは 自然体で 静かにして下さったので見れるものは見れました。 大人になっても 今の自然体でいらしてくださいね。

ルート3前半での写真 市村さまが撮影 送って下さったお写真です。

     


     


ここから 約1キロで 上がり坂になり 坂を上ると 草原に出ます。 少し歩くと かつての米軍レーダー施設(今はタイ国軍管轄)が立つカオ・キヤオが見えます。およそ1300mあまりの高さの頂です。草に目を傷つけられないように 気をつけながら 歩いて 象の塩舐め場を越え 小川に渡した土橋とかわうその棲む池前を無事通り抜けたら また上がり道で 丘上の見晴らし台に着きました。
ハイキングコース出口は 後1キロの平坦な歩きですが ここでは 肉食獣の糞が転がり その糞特有のフンコロガシが土に穴をあけているし  鹿や野牛の足跡探しもあって 楽しいです。

 今回は昼食は ヴィジターセンター近くの食堂でいただきました。 宿舎到着は 午後2時頃。シャワーをすませて すみやかに プラチンブリ―口から バンコクへ向かいました。 バンコク到着は 6時頃でした。

楽しい旅でした。
実施にご協力くださったご参加の皆様 カオヤイ国立公園の職員に心からお礼申し上げます。




                                  レヌカー・M